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代表取締役会長・富田恭弘さん 有限会社富田酒造場

代表取締役会長・富田恭弘さん
有限会社富田酒造場

あるがまま―ここでしかできない、黒糖焼酎を造る

鹿児島から約400km、世界自然遺産の奄美大島は、鹿児島より沖縄にやや近い地点にあります。1年を通して温暖な気候の中、豊かな自然と共生する奄美大島において、国産の原料にこだわり、伝統の全量甕仕込みで黒糖焼酎を造る小さな酒蔵が、富田酒造場です。

創業は、奄美大島がまだアメリカの占領下にあった1951年。今では鹿児島で天文館に次ぐ繁華街と言われる・名瀬市中心部の屋仁川やにがわ通りに近い「らんかん山」の麓で、「らんかん酒造場」として始まりました。

蔵の後ろの「らんかん山」は、かつて富田酒造場近くの金久を含む奄美大島の4か所で白糖工場の建設に携わったアイルランド人の技師が滞在していた洋館があったことからその名が付いたとか

蔵では、3代目で現会長の富田恭弘さんのほか、4代目で現社長の真行さんを中心とした若いメンバーで焼酎造りに取り組んでいます。真行さんの小学生のお子さんが駆けていく姿もあり、建物は古くとも、何かフレッシュで、オープンな雰囲気を感じる酒蔵です。

左から父の恭弘さん、長男の真行さん、恭弘さんの甥の誠二さん

三男の圭祐さん

昔ながらの甕仕込みは、気候によって変わるもろみの発酵状況に常に気を使いながら、また甕ごとの違いが出ないよう気を配る必要もあり、人の手が掛かるうえ、経験を積んだ感覚が必要になる繊細なもの。また、一度に造ることができる量にも限りがあります。

「一次仕込みも二次仕込みも、全部この甕1つで済むから楽ですよ」と恭弘さんは笑いますが、その裏にはさまざまな苦労や難しさがあるはずです。

気温が低ければストーブで温め、高ければ冷却水で冷やす。我が子を育てるように、もろみを育てていく

蔵に立て掛けられた“あるがまま”という言葉。「自分が納得できるものしか世に出したくない」というこだわりを突き詰めるうち、自分にしかできないものに気付き、ひたすらにそれを極めてきた―。すべてを話さない恭弘さんですが、この言葉が、富田酒造場が辿ってきた軌跡、そして蔵の心構えを、物語っているようです。

その土地が醸す“風味”をまとった焼酎

代表銘柄の「龍宮」は、黒糖由来のほのかな甘い香りと、国産米のやさしい甘み、そしてキレの良い味わいを楽しめる、飲み飽きしない逸品。原料に使う黒糖は沖縄県産で、この日試食させてもらった多良間島の黒糖は、甘さの後にほろ苦さを感じる味でした。一方、「奄美の黒糖で造りたい」との想いからできた銘柄「まーらんせん」で使う奄美・徳之島産の黒糖は、ほろ苦さはあまり感じず、上品な甘さがありました。

ほとんどの酒蔵で原料の黒糖が沖縄産や外国産なのは、沖縄産の黒糖には国の補助金が出ていることが関係している

聞けば、降水量が少ないと、サトウキビに塩のほろ苦さが出るのだそうです。それで仕込む焼酎は、キリッと潮風を感じるような味わいになり、雨が多い奄美産のものを使えば、トロッと旨みのある酒質になるとのこと。「まさに風が味を生み出すから、風味と言うのだと思います」と恭弘さんが話すように、産地によって黒糖の風味は異なり、それが焼酎に活きて、銘柄の個性が生まれています。

創業当時から使う32個の和甕の中では、鹿児島産のうるち米と黒麹、黒糖、原生林・金作原きんさくばるが水源の水で仕込んだもろみが、おだやかに発酵を進めています。冬は潮風、春から秋はらんかん山の森の香りに包まれながら、3週間かけてできた熟成もろみは、3メートル30センチもの長い首を持つ蒸留器で蒸留され、原酒が出来上がります。

特徴的な蒸留器。スワンネックまでかなりの高さがあるため、気化した香り成分は取り出しにくくなるが、その分キレが生まれるのだそう

滋味深い創作島じゅうり(料理)といただく黒糖焼酎

奄美産の黒糖で仕込んだ「まーらん舟」や、樽貯蔵の「琥珀龍宮」など、これまで数々のヒット商品を手掛けてきた恭弘さん。実は料理人としての顔も持っていて、今は焼酎造りの傍ら、2年前に開店した予約制の創作島料理店「隠れ家とみた」で、島料理と黒糖焼酎のマリアージュを提案しています。

恭弘さんおすすめの肴、奄美の島じゅうり(島料理)を、富田酒造場のおすすめの黒糖焼酎と合わせて紹介してもらいました。地元の野茶坊焼やちゃぼうやきなど、こだわりの器にも注目です。

釣り好きな恭弘さん、釣った魚で料理を提供することもあるそう

前菜は、島ダコの葉ニンニクソース和え、島魚のパッションフルーツと酢味噌のソースがけ、「龍宮」漬けのカラスミ。奄美近海で獲れた新鮮な魚を、彩りよく香りもよい野菜や果物のソースでいただきます。合わせるのは、奄美産の甘くてジューシーなたんかんを皮ごと使った「たんかん酒」の炭酸割。南国ムードあふれるトロピカルな食前酒が、爽やかな喉ごしで料理を引き立てます。

島豚や豚軟骨煮など肉料理には「まーらん舟」の炭酸割、奄美の郷土料理の定番・鶏飯には「龍宮」の水割りを。島魚の握り寿司は、握りたてを手のひらにいただき、そのままひとくちでパクッ。続けてキンキンに冷えた「蔵和水」(アルコール度数12度)を流し込めば、フワッと香る黒糖の風味が魚の旨さと相まって、“口福こうふく”な余韻を演出してくれます。

お口直しのデザートは、さんご塩のジェラートに、パッションフルーツと黒糖を添えて。とっておきの樽貯蔵黒糖焼酎「宝島」をロックでちびちびといただくのが、最高です。

黒糖焼酎は米麹由来の甘み・丸みがあり、料理の味の邪魔をしないため、食中酒に向いています。おまけに糖分もゼロ。おいしい食事と一緒に、気兼ねなく飲むことができるお酒です。奄美でしか作ることが許されておらず、蔵人たちが長い年月をかけて造り上げる珠玉の奄美黒糖焼酎を、ぜひ島じゅうり(料理)と一緒に、みしょれ!(奄美の方言で「召し上がれ」の意味)

店に飾られる、恭弘さんが描いた甕とメッセージ「無い物を求めても始まらない 有るものを磨くと心が豊になる」

※本記事の情報は、取材当時のものです。

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