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絶景とともに、受継がれる黒瀬杜氏の想いをたどる南さつま周遊旅

絶景とともに、受継がれる黒瀬杜氏の想いをたどる
南さつま周遊旅

南さつま市の南西部、海沿いに広がるのが大浦・笠沙・坊津エリア。透き通る海と豊かな自然に囲まれたこの地域では、雄大な景観を楽しむだけでなく、各地に息づく歴史にも触れることができます。明治から焼酎造りを支え続けてきた黒瀬杜氏の技を今に伝える「杜氏の里笠沙」をはじめ、個性あふれる観光スポットが点在。今回はその魅力を余すことなく楽しめる、とっておきのルートをご紹介します。

観光・歴史|坊津歴史資料センター輝津館

最初に訪れたのは、南さつま市坊津町ぼうのつちょうにある歴史資料センター「輝津館きしんかん」。坊津の長い歴史の変遷を学ぶことができる、平成16年にオープンした歴史資料館です。貿易港として中国・琉球等との交流が盛んであった当時が垣間見える貿易品や、仏教文化資料、漁具など多くの文化資料が展示されています。

館内入口ですぐに目に入るのは、「坊ノ岬灯台フレネルレンズ」。昭和25年から74年ものあいだ坊ノ岬沖の船の安全を守っていたガラス製のレンズは、なんとその重さが約400キロとのこと。令和6年、LED化に伴いその役目を終え寄贈されました。現在は製造できないものだそうで、実物をみることができるのは非常に貴重な機会ですね。

走らせると、ガラガラと音がするガラガラ船

その隣にあるのは、地域伝統のお祭り”唐カラ船祭”で使用されるガラガラ船。こちらも色鮮やかで迫力があります。ガラガラ船は、端午の節句に子供たちの成長や健康を願い作られたとの言い伝えがあり、船の帆網にいくつも飾られている小さな人形の「サイノコ」は猿の子、または水夫をイメージしたと言われているそうです。可愛らしいフォルムをしています!

双剣石は、2本の剣を立てたような見た目

館内2階の展望テラスは、国指定名勝「坊津」双剣石のベストビュースポット。坊津町内には空気の澄んだ日に、硫黄島や屋久島も見えるという、海に囲まれた坊津ならではの場所もあります。その景観の良さから、CM撮影のロケーションに選ばれたこともあるそう!

リアス式海岸が織りなす、美しい景観を楽しめる

展示の一つひとつが分かりやすく、日本三津の一つとして栄えていた坊津地域の当時を彷彿とさせる場所でした。館内に展示されている文化財は、坊津町内外から収集されており、その歴史の深さや重みを痛感しました。

観光|映画「007」撮影記念碑

国道226号を北上し、坊津町秋目にやってきました。この地は、昭和42(1967)年公開の映画「007は二度死ぬ(You Only Live Twice)のロケ地として知られています。撮影当時は、主演のショーン・コネリーはじめ、丹波哲郎や浜美枝など、国際的に名だたる俳優たちがこの地を訪れたそうです。

平成2(1990)年、地元の有志たちの尽力により建立された記念碑。秋目の風景は今も当時と大きく変わらないこともあり、映画ファンや観光客にとっては”聖地”として人気スポットとなっています。

記念碑にはショーン・コネリーらのサインが刻まれている

観光・景勝地|笠沙美術館(黒瀬展望ミュージアム)

007ロケ地記念碑から車でおよそ10分。海沿いの高台にたたずむ「笠沙美術館」に到着しました。見えてくるのは、水平線を望むロケーションと、洗練された建築美が印象的な建物。

アートも景色も楽しめる、笠沙美術館

アートも景色も楽しめる、笠沙美術館

館内に入るとまず目を奪われるのは、東シナ海を一望できる大きなガラス窓。まるで一枚の絵画のような景色を背景に写真を撮ろうと、SNSで評判を聞きつけて訪れる県外の来館者や外国人観光客も多い人気スポットです。
館内では、地元ゆかりの美術家・黒瀬道則さんの作品がメインで展示されています。絵画とオブジェの中間のような独創的な作風で知られ、寄贈された作品を中心に、約3〜4カ月ごとに入れ替え展示が行われています。そのほか、令和元年の天皇陛下御即位にあたっての奉祝演奏の中で作品が起用された、マーク・エステルさんの個展など国内外の作家に利用されてきました。

大きなガラス窓が人気のフォトスポット

大きなガラス窓が人気のフォトスポット

建物の設計を手がけたのは、JR九州の列車デザインなどで知られる水戸岡鋭治さん。館内のどこを切り取っても絵になる空間は、訪れる人それぞれが自分だけの写真スポットを見つけたくなる美術館です。ドライブの途中に気軽に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

天気がいい日には、黒島と硫黄島が見える

この地の歴史やおすすめスポットも教えてくれる、常駐スタッフの有留さん

この地の歴史やおすすめスポットも教えてくれる、常駐スタッフの有留さん

グルメ|お食事処 玉鱗

国道226号をさらに北上し、南さつま市笠沙町へ。この地に店を構える「お食事処 玉鱗ぎょくりん」は、地元片浦港で水揚げされる新鮮な魚介を使った料理が評判のお店です。平成元年のオープン以来、35年以上にわたり、地元の人々はもちろん、遠方から足を運ぶ観光客にも親しまれてきました。

店内に入ると大小のいけすが

落ち着いた店内には、カウンター席や座敷席を完備

なかでも特に人気を誇るのが「たかえび定食」。希少なタカエビを、刺身・から揚げ・塩焼き・味噌汁と、さまざまな調理法で一度に楽しめる贅沢な定食です。笠沙沖で獲れるタカエビは身がやわらかく、口に広がる上品な甘みが特長。まさに、ここでしか出会えない逸品です。

刺身、焼き物、から揚げ、小鉢、味噌汁、ごはん、漬物、フルーツがセットになった豪華定食

焼酎と相性ぴったりの逸品!

メニューも豊富で、おすすめ料理も数多く揃います。「地魚定食」は、笠沙沖で獲れた季節の旬の魚を使った刺身がメインの定食。今回は、カンパチ・マダイ・ハガツオをいただきました。どれも脂が乗り、旨みが凝縮された極上の味わいです。
また「煮魚定食」も、魚の種類は仕入れによって変わり、旬の味を堪能できます。この日は初夏から夏にかけて旬を迎えるイサキを使用。丸ごと1匹煮付けられた姿は見た目のインパクトもさることながら、口に運べばふっくら柔らかく、優しい味付けがご飯と相性抜群です。

地魚定食

煮魚定食

どのメニューも鮮度・味・ボリュームすべてにおいて大満足。笠沙の海の恵みを心ゆくまで堪能するとともに、お店の方々のあたたかなおもてなしに心身ともに癒されます。

時を越えて香る、黒瀬杜氏の技
―株式会社杜氏の里笠沙―

車で移動すること約7分。笠沙町・黒瀬集落に佇む「杜氏の里笠沙」にやってきました。この地は、古くから焼酎醸造の技術が伝承し、県内外で活躍してきた「黒瀬杜氏」のふるさと。明治から受け継がれる黒瀬杜氏の手造り焼酎の技法を今も実践し、さらに当時の道具や資料を展示する「黒瀬杜氏展示館」も併設しています。平成5年の開館以来、年間約2万人が訪れ、多くの人々に黒瀬杜氏の味わいが愛され続けています。

出迎えてくれたのは、館長の片平孝一さんと5代目杜氏の黒瀬道也さん。お二人とも黒瀬で生まれ育った“黒瀬っ子”で、地元への誇りを胸に日々焼酎造りやその魅力発信に励んでいます。

片平さん(左)と黒瀬さん(右)

最初に案内された展示館では、等身大の人形「老杜氏」が鹿児島弁で来館者を迎えてくれます。その後ナレーションに沿って館内を巡り、手造り焼酎の工程や道具の使い方を目で見て耳で学べる仕掛けになっています。

老杜氏の姿はまるで本物の人間のよう

焼酎造りに関する貴重な展示物がずらり

奥へ進むと、黒瀬杜氏の歴史が語られます。かつて黒瀬集落の男性たちは、8月〜12月になると鹿児島や九州各地へ出稼ぎに行き、現地で磨いた焼酎造りの技をふるさとへ持ち帰り伝承してきました。それが焼酎文化の普及や発展に大きく寄与したのです。しかし時代とともに機械化の進展などにより、300〜400人いた杜氏や蔵人も今ではわずか10人ほどに。それでも黒瀬さんは、「伝承されてきた手造りの焼酎を守り続け、そしてまた次の世代に伝えていきたいですね」と力強く語ってくれました。

黒瀬杜氏の系譜は「地酒系統」と「泡盛系統」に分かれ、地酒系統の初代杜氏・片平はじめ氏は館長・片平さんの祖父なのだそう

黒瀬杜氏が関わった九州各地の焼酎や歴代杜氏を紹介するパネルも設置

初代杜氏・片平はじめ氏の「一」に鹿児島弁の敬称「どん」を組合せ、名付けられたのが「一どん」

続いて、「手造り」の技が見学できる製造現場へ。今回は特別に、現場のすぐ近くまで案内していただきました。
「焼酎造りは麹づくりが命」と語るお二人と向かったのが「麴室」。なんとこの麹づくりが始まる日から、蔵人たちは蔵に寝泊まりし、昼夜問わず麹の温度を確認しているそう。「通常機械に頼ることの多い温度管理も、温度計や自身の手の感覚で行っているんですよ」と黒瀬さん。温度調節も、その日の麹の様子や天候に合わせ、手入れや天窓・扉の開閉で微調整。これぞ熟練の職人技です。

麹室の天井に設けられた空気調整窓

杜氏の里笠沙で焼酎造りに携わり22年の黒瀬さん

一次仕込み、二次仕込みの現場も見せてもらいました。二次仕込みでは、一次もろみに芋を加えるため、櫂棒かいぼうを使って混ぜ合わせる作業もひと苦労。芋がダマにならないように、そしてもろみの温度管理も重要な作業です。実は櫂棒も先端の爪以外は蔵人の手作り。使う道具ひとつとっても手造りへのこだわりが感じられます。

「底から上へ、足腰を使って混ぜて」とアドバイスをもらいながら体験

隣へ進むと、昨年、6年ぶりに新調されたという木樽蒸留器が。木樽は製造期以外使用しないため、張り合わせた板に隙間ができ漏れてしまいます。そのため仕込み前には樽に水をいれ、木が水分を吸収し膨張する「水蒸留」を行うのだとか。長年使うと木が疲れ機能がうすれるため入れ替えが必要ですが、それまでは杜氏が中に入り手入れを続けます。「木樽も生き物なんですよ」という片平さんの言葉通り、日々丁寧に手をかける姿はまるで生き物を育てるようですね。

蒸留は1回約2時間半、1日3回行われる

熟成中の「二刀流」の原酒の香りを特別に体験

見学の締めくくりは試飲コーナーへ。原料や麹の違いによって、香りから違いを楽しめる3種を用意いただきました。
まずは、黄金千貫と白麹を使用した「黒瀬杜氏」。甘さがあり飲みやすく、幅広い層に親しまれている一本です。続いて、黒麹特有の引き締まった味わいが特徴の「薩摩すんくじら」。「すんくじら」とは鹿児島弁で「隅っこ」を意味し、この笠沙が薩摩半島の端に位置することに由来しているのだとか。最後は「笠沙恵比寿」。原料にジョイホワイトを使用し、白麹をベースに黄麹で仕上げたこの焼酎は、すっきりとした香りの中に芳醇な味わいを秘めています。
おすすめの飲み方について「自分が美味しいと思われるのが一番美味しい飲み方です」と黒瀬さん。焼酎は自由に楽しむもの――そんな思いが言葉から伝わってきます。

左から「薩摩すんくじら」「笠沙恵比寿」「黒瀬杜氏」

ロビーには売店もあり、杜氏の里笠沙の商品はオンライン以外ではここでしか購入できないとのこと。この日は、新しい木樽蒸留器で仕込んだ初垂れ焼酎「星空の郷」が並んでいました。新調時だけの木の香りを纏うその味わいはとても貴重な一本です。さらに抽選販売の「一どん」は、当選者のみが味わえる逸品。毎月全国から多くの応募が集まっているそう。

左から「二刀流」「笠沙恵比寿」「薩摩すんくじら」「黒瀬杜氏」「一どん」

限定焼酎「星空の郷」

「この蔵では大手メーカーの1日分の原料を、1年かけて使うぐらい小さな蔵です。杜氏の勘や知識、経験を大事にした手造りの焼酎を、黒瀬に息づく焼酎として皆さんに味わってほしいですね」という片平さんの言葉がとても印象的でした。ここで造られる一本一本には、蔵人たちの努力と情熱が宿っています。その想いを感じながら味わう一杯は、さらに格別な味わいとなるでしょう。

最後は一どんのラベルとともに記念撮影

観光・ショッピング|くじらの眠る丘・座礁くじら記念碑/大浦特産品直売所 ふるさとくじら館

国道226号線沿いに、大きなクジラのモニュメントと特徴的な建物が現れたら、「くじらの眠る丘」に到着です。

ここは、平成14(2002)年1月、大浦町の海岸に14頭のマッコウクジラが集団座礁した出来事を後世に伝えるためにつくられた記念施設です。みぞれまじりの風雨の中、懸命な救出活動が行われ、1頭の救出に成功。命を落とした13頭のうち1頭は骨格標本として保存され、他の12頭は前例のない「海底沈設」で海へと還されました。
館内には、保存されたクジラの巨大な骨格標本をはじめ、当時の救出活動の記録やパネル展示が並び、命の尊さと、それに向き合った地域の人々の想いに触れることができます。

全長13メートルの骨格標本は迫力満点!

同じ敷地内に併設された物産館「大浦特産品直売所 ふるさとくじら館」にやってきました。
館内に入ると、地元・南さつま市で採れた新鮮な野菜や果物がずらり。どれもが色鮮やかで立派であり、そして手頃な価格で販売されているとあって、来場者から人気を集めています。

地元で収穫された立派な野菜に果物が揃っています

館内では、隣接する加工センターで製造された各種加工品も販売。なかでも一番人気は、ふくれ菓子の「福麗女房ふくれかか」。小麦粉、重曹、黒糖などを混ぜて蒸した、鹿児島を代表する郷土菓子であり、ふんわりやさしい味わいは、どこか懐かしさを感じさせてくれる一品です。このほかにも、しそジュースや麺つゆ、味噌など、オリジナル加工品が多数ラインナップ。見て選ぶだけでも楽しく、ついつい手が伸びてしまいそうです。

黒砂糖味のほかにココア味も製造しているとのこと

物産館でなんとタカエビを発見!野間岬沖合で獲れたタカエビを急速冷凍して販売しており、解凍すれば新鮮な味わいをいつでも楽しめるとのこと。タカエビと一杯楽しみながら、南さつまの旅に思いふけるのも素敵な時間になりそうですね。

※本記事の情報は、取材当時のものです。

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